山岳写真のトップカバー作品館

山岳写真の鈴木菊雄館表紙に使用した、作品解説や山岳情報です。
掲載期間:2012年4月〜2013年3月



 怪峰・ジャヌー (2012年4月の表紙) 

 
 ネパールヒマラヤ北西部・カンチェンジュンガ山群のジャヌー(標高7710m)、1976年に青春を賭けた日本の若者たちが苦闘の末に登頂を果たした高峰である。その特異な山容を撮りたいと、標高4180mのシエレレ天幕場を早朝の3時30分に出発、2時間かけてミルギン峠に到着した。日の出の時刻になっても怪峰は雲中に隠れている。季節は3月下旬、烈風厳寒の峠にて待つこと6時間、やっと待望した怪峰の全貌が姿を現した。夕照までねばったが、再び雲中に隠れてしまった。





   残雪の尾瀬ヶ原(2012年5月の表紙) 

 
 長い冬、尾瀬ヶ原の湿原は全て厚い雪のべールの下で静かに眠っている。池塘や草原が姿を現わすのは、5月上旬頃からである。雪解けの季節になると、尾瀬ヶ原は長い冬から目覚る。樹木の芽吹きは未だだが、池塘には水芭蕉やリュウキンカが華麗に開花する。湿原では木道を歩くことが常識であるが、この時期は未だ木道が雪に埋もれていることが多く、残雪の上を何処でも歩けることは大きな醍醐味である。





  芽吹く涸沢カール (2012年6月の表紙) 

 
標高2400mの涸沢カールは穂高岳の登山ベース、山小屋2軒と天幕場がある。7月になると雪解けも進み、高山植物の開花と新緑の季節を迎える。下旬になると小屋も天幕場も超満員になり、多くは早朝から奥穂高岳や北穂高・前穂高岳などに慌ただしく出発している。その後の静寂な一時は、点在する大岩上で昼寝すると誠に快適だ。間近に迫る穂高岳を背景にナナカマドの新緑や開花をじっくり鑑賞しながら昼寝する、嗜好の一時である。





寸光に輝く (2012年7月の表紙) 

 
槍・穂高岳の西側から眺めるには、岐阜県側の新穂高温泉より小池新道を辿り双六小屋に宿泊する。7月下旬、黎明の小屋を後に樅沢岳稜線に立つと逆光の槍ヶ岳を背景に、赤いオンタデ花がスポット光に輝いていた。梅雨が完全には明けきれない稜線でも、自然の営みは止まることは無く、長い冬に閉じ込められた草花が一斉に開花する。





大キレットと槍ヶ岳 (2012年8月の表紙) 

 
北穂高岳3110mの山頂から300m近くも落ち込む大キレット、鋭く切れ込む槍ヶ岳への稜線はダイナミックで雄大だ。天候に恵まれれば、朝焼けに始まり夕照の滝谷まで変化に富む展望を楽しむことが出来る。更に恵まれれば、滝谷より湧き出すガスが大キレットにかかり高山らしい光景を演じてくれるが、これだけは天に祈るしかないだろう。





ブロードピーク  (Broad Peak:8,047m)
 (2012年9月の表紙)
 

 
8000m峰12番目のブロードピーク、パキスタン・バルトロの奥で北側は中国チベット自治区となる。「Faichan Kangri」という地元名があるが、発見当時はK3(カラコルム3)と呼ばれており、その後に端正な山容からBroad Peakと呼ばれるようになった。標高世界第二位のK2とガッシャブルムに挟まれた不遇な山であるが、ベースキャンプのあるゴッドウィンオースチン氷河から眺めるともっと険しい山容である。





秋彩槍ヶ岳  (槍ヶ岳:3,180m)
 (2012年10月の表紙)
 

 
槍ヶ岳は日本で標高5番目の3180m、北アルプスの盟主であるが地理的には飛騨山脈南部
ということである。東西南北どの方向からみても天をつく鋭鋒から、日本のマッタホルンといわれている。登山者が一度は登ってみたいと憧れる山でもあるが、近づいて見ると岩石の固まりで、殺伐たる山容である。その槍ヶ岳がもっとも鮮やかに彩られるのが、10月上旬の紅葉のシーズンだ。表登山口の槍沢は黄葉や紅葉に彩られるが、最も鮮やかに冴えるのは真っ赤に色づくナナカマドである。





厳冬の燕岳夕照  (燕岳稜線:2700m)
 (2012年12月の表紙)
 

 
燕岳は槍ヶ岳の展望台として、また独特の花崗岩が林立する景観が素晴らしい。雪の合戦尾根から年末に特別営業する燕山荘に到着すると、早くも燕岳が夕照の黄金色に染まり始めた。宿泊受付を大急ぎで済ませて、強風下の燕岳稜線に飛び出した。強風が花崗岩に創り出した岩氷を大きく入れて、独特の黄金色が消える間際にシャッターを押した1枚である。





 元旦の八ヶ岳と富士山 (横岳稜線より)
 (2013年1月の表紙)
 

 
年末年始は稜線の山小屋にて新年を迎えるのが恒例になっている。秋山が終わると山小屋も閉鎖されり、稜線撮影が出来るのは北アルプスの燕山荘か通年営業の八方池山荘・西穂山荘、南八ヶ岳の展望荘などに限られる。夜明け前に展望荘より厳寒の稜線に飛び出して強風の横岳稜線に三脚をかまえる。やがて浅間山から富士山にかけての薄雲が茜色に染まり始めて赤岳東面を照らし始める。強風でフイルム交換も出来ない中で、岩角につかまりながらシャッターを押し続ける。




鋭鋒マッタホルン (クラインマッタホルン上部より)
(2013年2月の表紙)
 

 
たおやかなモンブランとは対称的に、マッターホルンはアルプスのシンボルともいえる鋭鋒である。日本の槍ヶ岳を更に鋭くしたような山だ。
スイス・ツエルマットの教会付近より眺めると、最もバランスがとれて絵になるが、私には面白みがない。ゴルナーグラードやフインデルンの山小屋にも泊まってみたが、山頂のくちばしと北壁とのバランスにかける。
イタリア側のチェルビニアからは、これでもマッターホルンか思える山容で、特有の鋭さがない。冬3月、登山基地となるヘルンリ小屋の下部より、仰ぎみる感じのマッターホルンを撮ってみた。




横岳大同心の霧氷(南八ヶ岳中山乗越付近より)
(2013年3月の表紙)
 

 
南八ヶ岳の核心部は横岳から赤岳、阿弥陀岳にかけての岩稜、八ヶ岳の中でも最もアルペン的な山域だ。北日本は大陸からの季節風の影響で大雪や荒天が多いが、ここ八ヶ岳は冬晴れに恵まれて樹氷や岩氷などの冬の風物詩に恵まれることが多い。荒天が去ると横岳の西側岩稜が純白の衣を纏う。晴が続くと直ぐに溶けてしまうので、撮影も短時間勝負である。



山岳写真の鈴木菊雄館トップへ
  
inserted by FC2 system