軍 刀 利 山  フォト紀行


軍刀利山<グンダリヤマ>と読むらしいが、手元にある旺文社の日本山名辞典で調べても見当たらない。
インターネットで検索してみると、140件くらい引きあたったが、多くは今回下山口に予定している大月市の軍刀利神社に関するものばかりであった。こんな山の登山道無きルートへ挑戦するのは、我が我孫子登山倶楽部のルーツ、私にとっては久しぶりの藪山である。

 奥多摩の山なんて何年ぶりかな・・・ 
早朝5時30分、心弾ませて駅に着いてみてビックリ、なんと参加者11名全員が男性ばかりではないか。藪山予想に尻込みか、あるいはブランド指向の山行が浸透したのか、最近にしては珍しい山行である。ウイークデイはサラリーマンで混雑している武蔵野線も、土日の早朝は中高年の登山客が目立つ。朝飯を食べる人、仲間同士でお喋りに花が咲く人と様々である。この状況は中央線からの登山者を合流して、立川から青梅線に乗り換えると登山専用電車に変身する。
武蔵五日市駅にて下車して、予約してあったタクシーに行き先を告げると、幸いにも林道経由で熊倉沢出会の山崎橋まで乗り入れてくれた。橋付近で準備体操をしながら、尾根の取り付き点と渡渉個所を探す。ガードレールを超えて10mほど急斜面を下り、水量の少ない熊倉沢を飛び石伝いに対岸へ渡る。尾根に取り付くと登山道や踏み跡は全く無いが、尾根上のルートも明確で思っていたより藪は深くない。

急斜面を20m程登ると、目の前に一対のカタクリが現れた。一対とは大きな花と一回り小ぶりな花で、株は別であるが寄り添うように咲いている。花びらは白鳥が大きく羽を拡げたよう胸をはり、逆光に透かして見ると薄桃色の花弁が炎のように輝いている。カタクリの花は普段は鳥の嘴のように垂れているが、陽があたり始めると花弁が反り返って可憐な花芯が輝きだす。短時間で萎んでしまうので、普段は蕾の場合が多い。カタクリの花を見るときは、上から見下ろしたのではその可憐さが分からない。視点を地表まで下げてみるといい。こんな姿をフイルムに納めようと、何度レンズを向けたことか。未だに可憐なカタクリの花を撮らえられない。私にとって所詮は高根の花なのである。行動中で見た花は後にも先にもこのカタクリのみで、非常に印象に残った光景であった。

その後はひたすら樹林帯の急登が続くが、藪は深くなく所々には檜の植林帯が有り、きれいに枝を降ろして手入れされた跡が見える。北側の斜面が全て檜の植林帯が拡がっているので、近くまでは林道が伸びているのかもしれない。進む方向には目印テープ等は全く付いていないが、尾根筋は明瞭で登りやすい。中程まで登ると広葉樹林帯となり、対面の尾根などの見晴らしがきいてくる。しかし目標物が無いので、どの付近を歩いているのかの判断が難しい。Tさんの高度計で840mピークで休もうとしたが、ダラダラの登りのみで場所の特定が出来ないまま、通り過ぎてまったらしい。藪道ではあるが大汗をかかない程度の冷風が、常に吹いているのが嬉しい。

11時頃に標高844m付近で、北側の沢から登ってきたのか赤テープとほんのりとした踏み跡が現れた。それから傾斜が一段ときつくなり息も荒くなってきた。若干勾配が緩くなったと思える頃、目の前の笹薮がガサガサと騒がしい。すわっつ・・熊かと身構えたら、いきなりオバンの一団が黄色い叫びをあげながら出現した。ここが今回の終着点であり、笹尾根と合流である軍刀利山頂上であった。11時20分、狭い山頂では中高年登山者が賑やかに談笑し、静かなる山稜からいきなり銀座通りに紛れ込んだ感じである。ゆっくりと腰を降ろし、昼食タイムとなる。新緑と山桜のベストシーズンとあって、ここから生藤山までは人また人、尾根上の平坦地は全て埋まっている感じであった。

軍刀利山から平坦な尾根道を数分歩くと、いきなり立派な鳥居と御影石の真新しい記念碑が現れた。表には軍刀利の由来や歴史が刻まれているが、裏に回って見てビックリ。なんと白籏史朗寄進とある。 そうか、山岳写真家の氏は大月市出身であり、故郷の山に立派な記念碑を寄贈することになったのであろう。しかし若干場違いな雰囲気の記念碑であった。


そこから30分程で生藤山山頂であるが、ここも満員である。
今回は軍刀利山が目標でもあり、休憩無しで下山することにした。道の途中に桜の大木があり休憩には絶好の場所であるが、団体客が下山して来ない内に先を急ぐことにした。尾根から沢沿いのコースに移って間も無く、軍刀根神社に到着。古くは武田信玄に由来するのか、戦前までは戦神として信仰されてきたらしい。鳥居前には推定300−500年、高さ46mの町天然記念の大桂が威風堂々と鎮座していた。

《軍刀利山 概要》   標高970m

山域

奥多摩・大月市

地図

1/25000図  武蔵五日市 与瀬

コース

 JR武蔵五日市駅=タクシーにて下川乗〜熊倉沢出合い〜長尾尾根〜軍刀利山頂上〜生藤山〜石楯尾神社ーJR上野原駅

 


  

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